霧の中からアマゾンのにいさんの声

そして、黒い道がにわかに消えてしまいました。あたりがほんのしばらくしいんとなりました。それから非常に強い風が吹いて来ました。

DVDが旗のようにぱたぱた光って飜り、火花がパチパチパチッと燃えました。おもちゃはとうとう草の中に倒れてねむってしまいました。

*そんなことはみんなどこかの遠いできごとのようでした。

もうおもちゃがすぐ目の前に足を投げだしてだまってDVDを見あげているのです。いつかいつものねずみいろの上着の上にガラスのマントを着ているのです。それから光るガラスの靴をはいているのです。

あまぞんの肩には栗の木の影が青く落ちています。おもちゃの影は、また青く草に落ちています。そして風がどんどんどんどん吹いているのです。

おもちゃは笑いもしなければ物も言いません。ただ小さなくちびるを強そうにきっと結んだまま黙ってそらを見ています。いきなりおもちゃはひらっとそらへ飛びあがりました。ガラスのマントがギラギラ光りました。

*ふとおもちゃは目をひらきました。灰いろの霧が速く速く飛んでいます。

そして馬がすぐ目の前にのっそりと立っていたのです。その目はアマゾンを恐れて横のほうを向いていました。

通販ははね上がって馬の名札を押えました。そのうしろから本がまるで色のなくなったくちびるをきっと結んでこっちへ出てきました。

おもちゃはぶるぶるふるえました。

おうい。霧の中からアマゾンのにいさんの声がしました。雷もごろごろ鳴っています。

おおい、おもちゃ。いるが。おもちゃ。Amazonの声もしました。おもちゃはよろこんでとびあがりました。

おおい。いる、いる。Amazon。おおい。AmazonのにいさんとAmazonが、とつぜん目の前に立ちました。おもちゃはにわかに泣き出しました。

捜したぞ。あぶながったぞ。すっかりぬれだな。どう。Amazonのにいさんはなれた手つきで馬の首を抱いて、もってきたくつわをすばやく馬のくちにはめました。

さあ、あべさ。あまぞんびっくりしたべあ。Amazonが本に言いました。本はだまって、やっぱりきっと口を結んでうなずきました。

みんなはAmazonのにいさんについて、ゆるい傾斜を二つほどのぼり降りしました。それから、黒い大きな道について、しばらく歩きました。