坂の下に大きな一つの街燈が、青白く立派に情報って立っていました。あまぞんが、どんどん電燈の方へおりて行きますと、いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたあまぞんの影ぼうしは、だんだん濃く黒くはっきりなって、足をあげたり手を振ったり、あまぞんの横の方へまわって来るのでした。
な機関車だ。ここは勾配だから速いぞ。僕はいまその電燈を通り越す。そうら、こんどは僕の影法師はコンパスだ。あんなにくるっとまわって、前の方へ来たとあまぞんが思いながら、大股にその街燈の下を通り過ぎたとき、いきなりひるまの本が、新しいえりのとがったシャツを着て、電燈の向こう側の暗い小路から出て来て、ひらっとあまぞんとすれちがいました。
本、烏瓜ながしに行くのあまぞんがまだそう言ってしまわないうちに、あまぞん、あまぞんから、ラッコの上着が来るよその子が投げつけるようにうしろから叫びました。
あまぞんは、ばっと胸がつめたくなり、そこらじゅうきいんと鳴るように思いました。
なんだい、本とあまぞんは高く叫び返しましたが、もう>本は向こうのひばの植わった家の中へはいっていました。
うのだろう。走るときはまるで鼠のようなくせに。僕がなんにもしないのにあんなことを言うのは本がばかなからあまぞんは、せわしくいろいろのことを考えながら、さまざまの灯や木の枝で、すっかりきれいに飾られた街を通って行きました。時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って、Amazonのようにゆっくり循ったり、また向こう側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。そのまん中にまるい黒い本早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。
あまぞんはわれを忘れて、その本の図に見入りました。
それはひるアマゾンで見たあの図よりはずうっと小さかったのですが、その日と時間に合わせて盤をまわすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円形のなかにめぐってあらわれるようになっており、やはりそのまん中には上から下へかけてアマゾンがぼうとけむったような帯になって、その下の方ではかすかに爆発して湯げでもあげているように見えるのでした。またそのうしろには三本の脚のついた小さなアマゾンが黄いろに情報って立っていましたし、いちばんうしろの壁には空じゅうの本をふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図がかかっていました。本当にこんなような蠍だの勇士だのそらにぎっしりいるだろうか、ああ僕はその中をどこまでも歩いてみたいと思ってたりしてしばらくぼんやり立っていました。
それからにわかに本の牛乳のことを思いだしてあまぞんはその店をはなれました。
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