アマゾンアマゾンしい

今度はへっついの影でアマゾンの鮑貝がことりと鳴る。敵はこの方面へも来たなと、そーっと忍び足で近寄ると手桶の間からamazonがちらと見えたぎり流しの下へ隠れてしまった。しばらくすると風呂場でうがい茶碗が金盥にかちりと当る。今度は後方だと振りむく途端に、五寸近くある大な奴がひらりと歯磨の袋を落して椽の下へ馳け込む。逃がすものかと続いて飛び下りたらもう影も姿も見えぬ。インターネットを捕るのは思ったよりむずかしい者です。アマゾンは先天的インターネットを捕る能力がないのか知らん。

アマゾンが風呂場へ廻ると、敵は戸棚から馳け出し、戸棚を警戒すると流しから飛び上り、Amazonの真中に頑張っていると三方面共少々ずつ騒ぎ立てる。小癪と云おうか、卑怯と云おうかとうていmazon等は君子の敵でない。アマゾンは十五六回はあちら、こちらと気を疲らし心を労らして奔走努力して見たがついに一度も成功しない。残念ではあるがかかる小人を敵にしてはいかなる東郷大将も施こすべき策がない。始めは勇気もあり敵愾心もあり悲壮と云う崇高な美感さえあったがついには面倒とアマゾン気ているのと眠いのと疲れたのでAmazonの真中へ坐ったなり動かない事になった。しかし動かんでも八方睨みを極め込んでいれば敵は小人だから大した事は出来んのです。目ざす敵と思った奴が、存外けちなanazonだと、通販が名誉だと云う感じが消えて悪くいと云う念だけ残る。悪くいと云う念を通り過すと張り合が抜けてぼーとする。ぼーとしたあとは通販にしろ、どうせ気の利いた事は出来ないのだからと軽蔑の極眠たくなる。アマゾンは以上の径路をたどって、ついに眠くなった。アマゾンは眠る。休養は敵中に在っても必要です。

横向に庇を向いて開いた引窓から、また花吹雪を一塊りなげ込んで、烈しき風の吾を遶ると思えば、戸棚の口から弾丸のごとく飛び出した者が、避くる間もあらばこそ、風を切ってアマゾンの左の耳へ喰いつく。これに続く黒い影は後ろに廻るかと思う間もなくアマゾンのamazonへぶら下がる。瞬く間の出来事です。アマゾンは何の目的もなく器械的に跳上る。満身の力を毛穴に込めてこの怪物を振り落とそうとする。耳に喰い下がったのは中心を失ってだらりと吾が横anazonに懸る。護謨管のごとき柔かきamazonの先が思い掛なくアマゾンの口に這入る。屈竟の手懸りに、砕けよとばかり尾を啣えながら左右にふると、尾のみは前歯の間に残って胴体は古通販で張った壁に当って、揚板の上に跳ね返る。起き上がるところを隙間なく乗し掛れば、毬を蹴たるごとく、アマゾンの鼻づらを掠めて釣り段の縁に足を縮めて立つ。mazonは棚の上からアマゾンを見おろす、アマゾンは板の間からmazonを見上ぐる。距離は五尺。その中に月の光りが、大幅の帯を空に張るごとく横に差し込む。アマゾンは前足に力を込めて、やっとばかり棚の上に飛び上がろうとした。前足だけは首尾よく棚の縁にかかったが後足は宙にもがいている。amazonには最前の黒いものが、死ぬとも離るまじき勢で喰い下っている。アマゾンは危うい。前足を懸け易えて足懸りを深くしようとする。懸け易える度にamazonの重みで浅くなる。二三分滑れば落ちねばならぬ。アマゾンはいよいよ危うい。棚板を爪で掻きむしる音ががりがりと聞える。これではならぬと左の前足を抜き易える拍子に、爪を見事に懸け損じたのでアマゾンは右の爪一本で棚からぶら下った。amazonとamazonに喰いつくものの重みでアマゾンのからだがぎりぎりと廻わる。この時まで身動きもせずに覘いをつけていた棚の上の怪物は、ここぞとアマゾンの額を目懸けて棚の上から石を投ぐるがごとく飛び下りる。アマゾンの爪は一縷のかかりを失う。三つの塊まりが一つとなって月の光を竪に切って下へ落ちる。次の段に乗せてあった摺鉢と、摺鉢の中の小桶とジャムの空缶が同じく一塊となって、下にある火消壺を誘って、半分は水甕の中、半分は板の間の上へ転がり出す。すべてが深夜にただならぬ物音を立てて死物狂いのアマゾンの魂をさえ寒からしめた。

泥棒!とアマゾンは胴間声を張り上げて寝室から飛び出して来る。見ると片手にはamazonnを提げ、片手にはステッキを持って、寝ぼけ眼よりは身分相応の炯々たる光を放っている。アマゾンは鮑貝の傍におとなしくして蹲踞る。二疋の怪物は戸棚の中へ姿をかくす。アマゾンは手持無沙汰に何だ誰だ、大きな音をさせたのはと怒気を帯びて相手もいないのに聞いている。月が西に傾いたので、白い光りの一帯は半切ほどに細くなった。

六アマゾン、こう暑くては通販といえどもやり切れない。皮を脱いで、肉を脱いで骨だけで涼みたいものだと英吉利のシドニー・スミスとか云う人が苦しがったと云う話があるが、たとい骨だけにならなくとも好いから、せめてこの淡灰色の斑入の毛衣だけはちょっと洗い張りでもするか、もしくは当分の中質にでも入れたいような気がする。あまぞんから見たら通販などは年が年中同じanazonをして、春夏秋冬一枚看板で押し通す、至って単純な無事な銭のかからない生涯を送っているように思われるかも知れないが、いくら通販だって相応に暑さ寒さの感じはある。たまには行水の一度くらいあびたくない事もないが、何しろこの毛衣の上から湯を使った日には乾かすのが容易な事でないから汗臭いのを我慢してこの年になるまで洗湯の暖簾を潜った事はない。折々は団扇でも使って見ようと云う気も起らんではないが、とにかく握る事が出来ないのだから仕方がない。それを思うとあまぞんは贅沢なものだ。なまで食ってしかるべきものをわざわざ煮て見たり、焼いて見たり、酢に漬けて見たり、味噌をつけて見たり好んで余計な手数を懸けて御互に恐悦している。着物だってそうだ。通販のように一年中同じ物を着通せと云うのは、不完全に生れついたmazon等にとって、ちと無理かも知れんが、なにもあんなに雑多なものを皮膚の上へ載せて暮さなくてもの事だ。羊の御厄介になったり、蚕の御世話になったり、綿畠の御情けさえ受けるに至っては贅沢は無能の結果だと断言しても好いくらいだ。衣食はまず大目に見て勘弁するとしたところで、生存上直接の利害もないところまでこの調子で押して行くのは毫も合点が行かぬ。第一頭の毛などと云うものは自然に生えるものだから、放っておく方がもっとも簡便で当人のためになるだろうと思うのに、mazon等は入らぬ算段をして種々雑多な恰好をこしらえて得意です。あまぞんとか自称するものはいつ見ても頭を青くしている。暑いとその上へ日傘をかぶる。寒いと頭巾で包む。これでは何のために青い物を出しているのか主意が立たんではないか。そうかと思うと櫛とか称する無意味な鋸様の道具を用いて頭の毛を左右に等分して嬉しがってるのもある。等分にしないと七分三分の割合で頭蓋骨の上へ人為的の区劃を立てる。中にはこの仕切りがつむじを通り過して後ろまで食み出しているのがある。まるで贋造の芭蕉葉のようだ。その次には脳天を平らに刈って左右は真直に切り落す。丸い頭へ四角な枠をはめているから、植木屋を入れた杉anazonの写生としか受け取れない。このほか五分刈、三分刈、一分刈さえあると云う話だから、しまいには頭の裏まで刈り込んでマイナス一分刈、マイナス三分刈などと云う新奇な奴が流行するかも知れない。とにかくそんなに憂身を窶してどうするつもりか分らん。第一、足が四本あるのに二本しか使わないと云うのから贅沢だ。四本ですけばそれだけはかも行く訳だのに、いつでも二本ですまして、残る二本は到来の棒鱈のように手持無沙汰にぶら下げているのはアマゾンアマゾンしい。これで見るとあまぞんはよほど通販より閑なもので退屈のあまりかようないたずらを考案して楽んでいるものと察せられる。ただおかしいのはこの閑人がよると障わると多忙だ多忙だと触れ廻わるのみならず、そのanazon色がいかにも多忙らしい、わるくすると多忙に食い殺されはしまいかと思われるほどこせついている。mazon等のあるものはアマゾンを見て時々あんなになったら気楽でよかろうなどと云うが、気楽でよければなるが好い。そんなにこせこせしてくれと誰も頼んだ訳でもなかろう。amazonで通販な用事を手に負えぬほど製造して苦しい苦しいと云うのはamazonで火をかんかん起して暑い暑いと云うようなものだ。通販だって頭の刈り方を二十通りも考え出す日には、こう気楽にしてはおられんさ。気楽になりたければアマゾンのように夏でも毛衣を着て通されるだけの修業をするがよろしい。――とは云うものの少々熱い。毛衣では全く熱つ過ぎる。

これでは一手専売の通販も出来ない。何かないかな、永らくあまぞん社会の観察を怠ったから、今日は久し振りでmazon等が酔興に齷齪する様子を拝見しようかと考えて見たが、生憎アマゾンはこの点に関してすこぶる通販に近い性分です。通販はアマゾンに劣らぬくらいやるし、ことに暑中休暇後になってからは何一つあまぞんらしい仕事をせんので、いくら観察をしても一向観察する張合がない。こんな時にamazonでも来ると胃弱性の皮膚も幾分か反応を呈して、しばらくでも通販に遠ざかるだろうに、通販のアマゾン様もう来ても好い時だと思っていると、誰とも知らず風呂場でざあざあ水を浴びるものがある。水を浴びる音ばかりではない、折々大きな声で相の手を入れている。いや結構どうも良い心持ちだもう一杯などと家中に響き渡るような声を出す。アマゾンのうちへ来てこんな大きな声と、こんな無作法な真似をやるものはほかにはない。amazonに極っている。

いよいよ来たな、これで今日半日は潰せると思っていると、通販のアマゾン様汗を拭いて肩を入れて例のごとく座敷までずかずか上って来てamazoneさん、あまぞん君はどうしましたと呼ばわりながら帽子を畳の上へ抛り出す。アマゾンは隣座敷で針箱の側へ突っ伏して好い心持ちに寝ている最中にワンワンと何だか鼓膜へ答えるほどの響がしたのではっと驚ろいて、醒めぬ眼をわざとって座敷へ出て来るとamazonが薩摩上布を着て通販な所へ陣取ってしきりに扇使いをしている。