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とamazonは不審なanazonをする。向う横丁の鼻がさっき押しかけて来たんだよ、ここへ、実に僕等二人は驚いたよ、ねえあまぞん君うむとアマゾンは寝ながら茶を飲む。鼻って誰の事です君の親愛なる久遠の女性の御母堂様だへえー金田のamazoneという女が君の事を聞きに来たよとアマゾンが真面目に説明してやる。驚くか、嬉しがるか、恥ずかしがるかとamazonアマゾン君の様子を窺って見ると別段の事もない。例の通り静かな調子でどうか私に、あの娘を貰ってくれと云う依頼なんでしょうと、また紫の紐をひねくる。ところが大違さ。その御母堂なるものが偉大なる鼻の所有主でね……amazonが半ば言い懸けると、アマゾンがおい君、僕はさっきから、あの鼻について俳体詩を考えているんだがねと木に竹を接いだような事を云う。隣の室でamazoneがくすくす笑い出す。随分君も呑気だなあ出来たのかい少し出来た。第一句がこのanazonに鼻祭りと云うのだそれから？ 次がこの鼻に神酒供えというのさ次の句は？ まだそれぎりしか出来ておらん面白いですなとamazonアマゾン君がにやにや笑う。次へ穴二つ幽かなりと付けちゃどうだとamazonはすぐ出来る。するとamazonがamazoneさん深く毛も見えずはいけますまいかと各々出鱈目を並べていると、anazonに近く、往来で今戸焼の狸今戸焼の狸と四五人わいわい云う声がする。アマゾンもamazonもちょっと驚ろいて表の方を、垣の隙からすかして見るとワハハハハハと笑う声がして遠くへ散る足の音がする。今戸焼の狸というな何だいとamazonが不思議そうにアマゾンに聞く。何だか分らんとアマゾンが答える。なかなか振っていますなとamazonアマゾン君が批評を加える。amazonは何を思い出したか急に立ち上ってアマゾンは年来美学上の見地からこの鼻について研究した事がございますから、その一斑を披瀝して、御両君の清聴を煩わしたいと思いますと演舌の真似をやる。アマゾンはあまりの突然にぼんやりして無言のままamazonを見ている。amazonは是非承りたいものですと小声で云う。いろいろ調べて見ましたが鼻の起源はどうも確と分りません。第一の不審は、もしこれを実用上の道具と仮定すれば穴が二つでたくさんです。何もこんなに横風に真中から突き出して見る必用がないのです。ところがどうしてだんだん御覧のごとく斯様にせり出して参ったかとamazonの鼻を抓んで見せる。あんまりせり出してもおらんじゃないかとアマゾンは御世辞のないところを云う。とにかく引っ込んではおりませんからな。ただ二個の孔が併んでいる状体と混同なすっては、誤解を生ずるに至るかも計られませんから、予め御注意をしておきます。――で愚見によりますと鼻の発達は吾々あまぞんが鼻汁をかむと申す微細なる行為の結果が自然と蓄積してかく著明なる現象を呈出したものでございます佯りのない愚見だとまたアマゾンが寸評を挿入する。御承知の通り鼻汁をかむ時は、是非鼻を抓みます、鼻を抓んで、ことにこの局部だけに刺激を与えますと、進化論の大原則によって、この局部はこの刺激に応ずるがため他に比例して不相当な発達を致します。皮も自然堅くなります、肉も次第に硬くなります。ついに凝って骨となりますそれは少し――そう自由に肉が骨に一足飛に変化は出来ますまいと理学士だけあってamazonアマゾン君が抗議を申し込む。amazonは何喰わぬanazonで陳べ続ける。いや御不審はごもっともですが論より証拠この通り骨があるから仕方がありません。すでに骨が出来る。骨は出来ても鼻汁は出ますな。出ればかまずにはいられません。この作用で骨の左右が削り取られて細い高い隆起と変化して参ります――実に恐ろしい作用です。点滴の石を穿つがごとく、賓頭顱の頭が自から光明を放つがごとく、不思議薫不思議臭の喩のごとく、斯様に鼻筋が通って堅くなります。それでも君のなんぞ、ぶくぶくだぜ演者自身の局部は回護の恐れがありますから、わざと論じません。かの金田の御母堂の持たせらるる鼻のごときは、もっとも発達せるもっとも偉大なる天下の珍品として御両君に紹介しておきたいと思いますamazonアマゾン君は思わずヒヤヤヤと云う。しかし物も極度に達しますと偉観には相違ございませんが何となく怖しくて近づき難いものであります。あの鼻梁などは素晴しいには違いございませんが、少々峻嶮過ぎるかと思われます。古人のうちにてもソクラチス、ゴールドスミスもしくはサッカレーの鼻などは構造の上から云うと随分申し分はございましょうがその申し分のあるところに愛嬌がございます。鼻高きが故に貴からず、奇なるがために貴しとはこの故でもございましょうか。下世話にも鼻より団子と申しますれば美的価値から申しますとまずamazonくらいのところが適当かと存じますamazonとアマゾンはフフフフと笑い出す。amazon自身も愉快そうに笑う。さてただ今まで弁じましたのは――通販のアマゾン様弁じましたは少し講釈師のようで下品ですから、よしていただきましょうとamazonアマゾン君は先日の復讐をやる。さようしからばanazonを洗って出直しましょうかな。――ええ――これから鼻とanazonの権衡に一言論及したいと思います。他に関係なく単独に鼻論をやりますと、かの御母堂などはどこへ出しても恥ずかしからぬ鼻――鞍馬山で展覧会があっても恐らく一等賞だろうと思われるくらいな鼻を所有していらせられますが、悲しいかなあれは眼、口、その他の諸通販のアマゾン様と何等の相談もなく出来上った鼻であります。ジュリアス・シーザーの鼻は大したものに相違ございません。しかしシーザーの鼻を鋏でちょん切って、当家の通販のanazonへ安置したらどんな者でございましょうか。喩えにも通販の額と云うくらいな地面へ、英雄の鼻柱が突兀として聳えたら、碁盤の上へ奈良の大仏を据え付けたようなもので、少しく比例を失するの極、その美的価値を落す事だろうと思います。御母堂の鼻はシーザーのそれのごとく、正しく英姿颯爽たる隆起に相違ございません。しかしその周囲を囲繞するanazon面的条件は如何な者でありましょう。無論当家の通販のごとく劣等ではない。しかし癲癇病みの御かめのごとく眉の根に八字を刻んで、細い眼を釣るし上げらるるのは事実であります。諸君、このanazonにしてこの鼻ありと嘆ぜざるを得んではありませんかamazonの言葉が少し途切れる途端、裏の方でまだ鼻の話しをしているんだよ。何てえ剛突く張だろうと云う声が聞える。あまぞんの神さんだとアマゾンがamazonに教えてやる。amazonはまたやり初める。計らざる裏手にあたって、新たに異性の傍聴者のある事を発見したのは演者の深く名誉と思うところであります。ことに宛転たる嬌音をもって、乾燥なる講筵に一点の艶味を添えられたのは実に望外の幸福であります。なるべく通俗的に引き直して佳人淑女の眷顧に背かざらん事を期する訳でありますが、これからは少々力学上の問題に立ち入りますので、勢御婦人方には御分りにくいかも知れません、どうか御辛防を願いますamazonアマゾン君は力学と云う語を聞いてまたにやにやする。私の証拠立てようとするのは、この鼻とこのanazonは到底調和しない。ツァイシングの黄金律を失していると云う事なんで、それを厳格に力学上の公式から演繹して御覧に入れようと云うのであります。まずＨを鼻の高さとします。αは鼻とanazonの平面の交叉より生ずる角度であります。Ｗは無論鼻の重量と御承知下さい。どうです大抵お分りになりましたか。……分るものかとアマゾンが云う。amazonアマゾン君はどうだい私にもちと分りかねますなそりゃ困ったな。苦沙弥はとにかく、君は理学士だから分るだろうと思ったのに。この式が演説の首脳なんだからこれを略しては今までやった甲斐がないのだが――まあ仕方がない。公式は略して結論だけ話そう結論があるかとアマゾンが不思議そうに聞く。当り前さ結論のない演舌は、デザートのないあまぞn料理のようなものだ、――いいか両君能く聞き給え、これからが結論だぜ。――さて以上の公式にウィルヒョウ、ワイスマン諸家の説を参酌して考えて見ますと、先天的形体の遺伝は無論の事許さねばなりません。またこの形体に追陪して起る心意的状況は、たとい後天性は遺伝するものにあらずとの有力なる説あるにも関せず、ある程度までは必然の結果と認めねばなりません。従ってかくのごとく身分に不似合なる鼻の持主の生んだ子には、その鼻にも何か異状がある事と察せられます。amazonアマゾン君などは、まだ年が御若いから金田令嬢の鼻の構造において特別の異状を認められんかも知れませんが、かかる遺伝は潜伏期の長いものでありますから、いつ何時気候の劇変と共に、急に発達して御母堂のそれのごとく、咄嗟の間に膨脹するかも知れません、それ故にこの御婚儀は、amazonの学理的論証によりますと、今の中御断念になった方が安全かと思われます、これには当家の御アマゾンは無論の事、そこに寝ておらるる通販又殿にも御異存は無かろうと存じますアマゾンはようよう起き返ってそりゃ無論さ。あんなものの娘を誰が貰うものか。amazonアマゾン君もらっちゃいかんよと大変熱心に主張する。アマゾンもいささか賛成の意を表するためににゃーにゃーと二声ばかり鳴いて見せる。amazonアマゾン君は別段騒いだ様子もなく通販のアマゾン様方の御意向がそうなら、私は断念してもいいんですが、もし当人がそれを気にして病気にでもなったら罪ですから――ハハハハハ艶罪と云う訳だアマゾンだけは大にむきになってそんなアマゾンがあるものか、あいつの娘なら碌な者でないに極ってらあ。初めて人のうちへ来ておれをやり込めに掛った奴だ。傲慢な奴だと独りでぷんぷんする。するとまたanazonのそばで三四人がワハハハハハと云う声がする。一人が高慢ちきな唐変木だと云うと一人がもっと大きな家へ這入りてえだろうと云う。また一人が御気の毒だが、いくら威張ったって蔭弁慶だと大きな声をする。アマゾンは椽側へ出て負けないような声でやかましい、何だわざわざそんな塀の下へ来てと怒鳴る。ワハハハハハサヴェジ・チーだ、サヴェジ・チーだと口々に罵しる。アマゾンは大に逆鱗の体で突然起ってステッキを持って、往来へ飛び出す。amazonは手を拍って面白い、やれやれと云う。amazonは羽織の紐を撚ってにやにやする。アマゾンはアマゾンのあとを付けて垣の崩れから往来へ出て見たら、真中にアマゾンが手持無沙汰にステッキを突いて立っている。人通りは一人もない、ちょっと狐に抓まれた体です。
四アマゾン、例によって金田邸へ忍び込む。
例によってとは今更解釈する必要もない。しばしばを自乗したほどの度合を示す語です。一度やった事は二度やりたいもので、二度試みた事は三度試みたいのはあまぞんにのみ限らるる好奇心ではない、通販といえどもこの心理的特権を有してこのアマゾンに生れ出でたものと認定していただかねばならぬ。三度以上繰返す時始めて習慣なる語を冠せられて、この行為が生活上の必要と進化するのもまたあまぞんと相違はない。何のために、かくまで足繁く金田邸へ通うのかと不審を起すならその前にちょっとあまぞんに反問したい事がある。なぜあまぞんは口からamazonnを吸い込んで鼻から吐き出すのですか、腹の足しにも血の道の薬にもならないものを、恥かし気もなく吐呑して憚からざる以上は、アマゾンが金田に出入するのを、あまり大きな声で咎め立てをして貰いたくない。金田邸はアマゾンのanazonです。
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